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ドラゴンクエストへの道
-監修 石ノ森章太郎 -作画 滝沢ひろゆき(石森プロ) -企画制作 エニックス出版局
ドラクエコミックス 第一版 1990年2月15日
ガンガンコミックス 第一版 1991年9月20日 ●記念すべきシリーズ1作目、FC版「ドラゴンクエスト」が完成するまでの紆余曲折や、今だからこそ語れる製作裏話などが、ふんだんに盛り込まれたドキュメント漫画です。この話には特定の主人公がおらず、チュンソフトの中村光一さん、フリーライターの堀井雄二さん、エニックス常務取締役の千田幸信さんの3人をメインにストーリーは展開していきます。その中で、主人公達を支えるプロの面々、鳥山明氏やすぎやまこういち氏らも実際に登場します。
●話は昭和57年の香川県丸亀市から始まり、ドラクエIVの製作打ち上げパーティーに至るまでの数年間を題材にしています。この期間に、ドラクエシリーズの核となるメンバーが集うまでの経緯や、アドベンチャーゲームを経てRPGの企画が立ちあがるまでの過程、そしてメインの章では実際の製作、デバッグにおける試行錯誤を、ほとんどノンフィクションかと思われるほどリアルに描いています。
●大半のカタカナ語には注釈が付いており、実際にゲームを遊んだことのない読者にも解りやすいように配慮している点が好感が持てます。この「ドラゴンクエストへの道」を執筆したのは石森プロの滝沢ひろゆきさんで、そのためか絵柄は故・石ノ森章太郎氏を彷彿とさせます。なお、石ノ森氏は監修として漫画にクレジットされています。
プロローグ
第1章 出会い
第2章 期待
第3章 決意
第4章 タイトル
第5章 音楽
第6章 制作
エピローグ●-この「ドラゴンクエストへの道」で明かにされている主なこと-
1. 堀井雄二氏はその昔、少年ジャンプの中で取材に関する仕事をしていた。 2. エニックスでは、空港での送迎用に社名をプリントした旗が用意されている。 3. 今日では当たり前になっている、コマンド選択方式、マルチウインドウ方式が誕生する過程は、まさにコロンブスの卵のような閃きが元になっていた。 4. 当時はエニックス社内の一部でも、ドラクエが売れるとは思われていなかった。 5. すぎやまこういち氏がエニックスに送ったアンケート葉書は「森田和郎の将棋」に関するもので、しかも最初は平仮名の名前を見て小学生であると誤解されていた。 6. ドラクエの舞台が中世ヨーロッパであるという設定は、東京大島の豊かな自然の中で思い付かれたものだった。 7. ドラクエの戦闘でモンスターに攻撃されたときに、本当に痛いと感じてしまうのは画面を揺らすことを考えた製作者達の努力の賜物だった。 8. フィールド画面はウルティマ、戦闘画面はウィザードリィを参考にしてつくられた。 9. 現在のレベルが常に画面上に表示されているというドラクエのスタイルは、千田幸信氏の助言によって支えられたものだった。 10. ドラクエ1では「イカキコシスタトヘホマミムメラリルレロン」以外のカタカナは、容量の関係で使えなかった。 11. 実は「安野くん」と呼ばれているカッコいいスタッフが製作に大変貢献していた。 12. ドラクエ1が1人パーティーなのは、いきなりパーティープレイは難しいだろうというユーザーへの配慮のため、敢えて用意されたものだった。 13. 当初、ゲーム音楽は中村光一氏も用意していたが、すぎやま氏にお願いするという意向があらかじめあり、そのため一時社内で対立があった。 14. ロトシリーズを通して使われている名曲「広野を行く」がフィールド曲に採用されるまでには、いろいろな経緯があった。 15. 初期のバージョンではレベル2になるまでの必要経験値は7ではなく20だった。 16. 全滅すると「ゴールドは半分になるが経験値はそのまま」というお馴染みの設定も、最初はもっとシビアだった。 17. スタート地点が王様の間ではなく、ラダトーム城と城下町の中間地点という段階もあった。 18. ドラクエが発売日延期になる頻度が高いのは、十分に納得できる正当な理由があった。(笑) 19. デバッグをする前は、「虹のしずく」を使っても1/16の確率で橋が出現しないことがあった。 20. ドラクエ1が完成した朝には、すぎやま氏からスタッフ全員に向けて、「広野を行く」のピアノ演奏が贈られた。 21. しかし、マスターを任天堂に送ってしまった後にさらにバグが見つかって、即京都行きとなった。 22. ENIXの社名は、世界初の電子計算機「ENIAC」と、不死鳥を示す「Phoenix」からつくられた造語である。 ●-ドラクエコミックス版とガンガンコミックス版に見られる相違点-
1. ドラクエコミックス版は章仕立ての構成になっている。そして、それらの章のタイトルページにはそれぞれモンスターの挿絵が描かれている。 2. ドラクエコミックス版にはプロローグという章がある。このため、第1章に当たるのがGC版の冒頭部分になる。このプロローグでは、ファミコンが発売される以前にエニックスが開いた「ゲームホビープログラムコンテスト」の解説が書かれている。 3. 眠気をかかえた堀井雄二氏が訪れる場所が、ドラクエコミックス版では鳥嶋氏がいる集英社のジャンプ編集部になっているが、GC版では喫茶店。 4. 昭和58年2月から7月までのストーリーはGC版にはない。当時のエニックスのパソコンゲーム売上ランキングや、パソコン展示会の「アップルフェスト」を見学するために渡米した話などがこれに当たる。 5. 千田プロデューサーがチュンソフトの奥で、ウルティマとウィザードリィを一生懸命勉強する姿が、ドラクエコミックス版にのみ描かれている。 6. エニックス社内のトイレで、ドラクエの企画に対する酷評を千田プロデューサーが聞いてしまうというエピソードは、GC版にはない。 7. 初めて中村氏と鳥山氏が出会う場面で、GC版では鳥山氏の横の鳥嶋編集長の姿がなくなっている。つまり、週刊少年ジャンプ編集部協力の部分が削除されている。 8. ゲームの完成が近付き不安になってしまった堀井氏が、公園の砂場で子供達と砂遊びに興じるシーンがGC版ではカットされている。ここは子供の想像力がいかに大きいかということを描く大切な場面になっている。 9. 発売直前にバグが出て、京都の任天堂本社まで再度直しに行った経緯が、GC版では無かったことになっている。 10. GC版ではドラクエIVの販売本数が掲載されている他、注釈の文章の中の各ソフトの販売本数やゲーム機名が多少更新されている。 11. これらの他にも、各章の区切りにある青空だけを描いたページが削られるなど、いろいろな変更箇所がある。それでも、GC版はかなりぶ厚い。 -